毒舌社長は甘い秘密を隠す
週末の都心は、どこも混んでいる。目的のカフェは銀座界隈の一流ホテル内にあって、ここなら社員に出くわす可能性も少ないだろう。
まさかホテルに行くと思っていなかったようで、入るのを一瞬躊躇した彼女の手を引いて入った。
「この店、評判らしいから」
「ここ、ずっと来てみたかったんです! だけど、いつも混んでて諦めていて……連れてきてもらえるなんて思わなかったなぁ」
わくわく顔の彼女はすんなりと最後尾へ立った。
人気店とはいえ、ホテル内ならそんなに待つこともないと思っていたのに、到着するなり三十分の行列に並ぶ羽目になってうんざりする。
「社長、行列に並ぶの平気なタイプなんですね」
「あぁ……まぁな」
できるだけいつもと変わらない態度で返事をするけれど、苦笑いになってしまった。
なによりも、嬉しそうにはにかむ彼女の表情を曇らせたくないから、グッと我慢するに限る。
周りを見れば、女性客が大半。俺と同じように並んでいる男性は、もれなく女性連れだ。
つまり、この状況を社員に見られたら、交際していると思われるだろう。
そうなったらなったで俺は一向に構わないけれど……彼女はどう思うのか。そんなきっかけで溝を作りたくはないし、仕事にも支障をきたさないとも限らない。