毒舌社長は甘い秘密を隠す
「優羽はこういう店にはよく行くの?」
「はい。甘党なので」
なにげなく彼女を名前で呼んでみたら、一瞬にして頬が染まったように見える。
同居を始めたばかりの頃、毎朝の見送りを新婚風にしてみたくて、冗談半分で名前で呼んでほしいと軽くお願いしたことがあった。
結局今でもそれは叶うことなく忘れられているようだけど。
「社長は、あまり得意じゃないですよね。家にもお菓子なんてなかったし……。せっかくのお休みなのにすみません」
「謝るようなことじゃないだろ。連れ出したのは俺なんだから」
「では、社長から召し上がってください」
「食わせてくれるんじゃないの? 響さん、あーんって」
「ええっ!?」
みるみるうちに耳まで染まった彼女の頬のほうが、ショートケーキの苺のように赤くなって美味しそうだ。
「あははは、冗談。優羽が食べたいだけ食べなさい」
この三カ月、散々抱きしめた。キスもしたことがある。
軽薄な冗談は言えるのに、肝心の想いは伝えられなくてもどかしい。