毒舌社長は甘い秘密を隠す

「食材を買いたいので、先にスーパーに寄っていいですか?」

 マンションが見えてきて、運転席でハンドルを握る彼に話す。


「いつも自分で買いに出てるんだろ? 休みの日くらい、コンシェルジュに頼んで楽をしたらいいよ」
「では、そうします」

 彼は、意外なところをよく見ている。日頃、先に帰宅している私がスーパーに寄って料理を作っていると気づいてくれていただけでも、なんだか嬉しい。


「おかえりなさいませ」
「こんばんは。お忙しいところ申し訳ないのですが、買い出しをお願いしてもいいですか?」
「かしこまりました」

 私はコンシェルジュに挨拶をするついでに、カウンターのメモを借りてスモークサーモンと鯛、砂抜き済みのあさりなどの買い物をお願いした。

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