毒舌社長は甘い秘密を隠す

「君さえよければ、また出かけないか?」
「はい! 楽しみにしてます」

 こうして出かけるのは今日限りかもしれないと思っていたから、思いがけない誘いが私の背中を押した。


「プラネタリウムにもまた行きたいです」
「そうだな」

 私の手を繋ぎ、引き寄せてくれたあの時間は、一分に満たなかったと思う。
 でも、まるで時が止まったような感じがして、すごくドキドキさせられた。
 それに、星空が映りこんだ彼の瞳は、いつになく切なそうに見えた。

 夕刊を読む彼の横顔を見つめる。
 こうして過ごしていても、きっと彼は私みたいにドキドキしたりしないんだろうな。
 彼にとって、私は秘書でしかないのだから。


「なに? どうした?」
「いえ、特には」

 彼が私の視線に気付いた次の瞬間、見計らったようにインターホンが鳴った。


「俺が出る」

 新聞をテーブルに置いて、リビングを出て行く彼の背中にじれったさを感じた。

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