毒舌社長は甘い秘密を隠す
「九条さん、お待たせしてすみません」
「いえ、大丈夫ですよ」
五月の連休の待ち合わせを思い出す。
あの日は九条さんの物件探しに付き合ったけれど、今夜は話したいと言われている。だけど、彼が折り入って私に話すようなことなんて見当がつかないままだ。
「お気に入りの店にお連れしてよろしいですか?」
「はい、ぜひ!」
「今夜は美味しいフレンチとワインを楽しみましょう」
九条さんは、汐留駅の前にある高級ホテルに入っていく。
日頃、ホテルで食事なんてする機会もない私は、緊張しながらも後をついて行った。
二十八階にあるその店は、ムーディーな照明と解放的な高い天井、界隈の夜景が望める景色が印象的だ。
「九条様、お久しぶりです」
「こんばんは。今日はこちらの女性をおもてなししていただけますか?」
「かしこまりました。お席へご案内いたします」
一流ホテルの中にあるレストランを行きつけにしているのか、九条さんは名乗らずとも顔を見ただけで挨拶をされていて驚いた。