毒舌社長は甘い秘密を隠す

「はい、沢村です」
《井浦です》
「その後、お加減はいかがですか?」
《…………》

 返事の代わりに、荒い呼吸が聞こえてくる。


「社長? 大丈夫ですか?」
《たいしたことはない。明日は出社できそうだ》
「それならいいのですが……。社長、ご用件をお伺いいたします」

 電話してきたからには、なにか用があるはずだ。
 一日、会社にいなかったから落ち着かないのかもしれない。井浦社長が仕事をしていない姿は、私だって想像しがたい。
 いくら社員たちを信頼していても、仕事から離れていれば気になるのだろう。
 そうだとしたら、私も秘書としてまだまだ精進する必要がある。体調が悪い時くらい、仕事を気にせず休んでもらえるようにならなくちゃ。


《……業務時間外に申し訳ないが、俺の家に来てくれないか?》
「やはり、お加減が優れないんですね?」
《あぁ、ちょっとな。今日は迷惑をかけてばかりですまないが》
「お気になさらないでください。今、銀座におりますので、すぐに向かいます」

 和菓子店に急いで向かい、カステラを買ってからタクシーに飛び乗った。

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