毒舌社長は甘い秘密を隠す

 朝食の支度を私に任せる代わりに、彼はコーヒーを淹れてくれている。

 ネイビーと白のボーダーカットソーを着た背中を見つめていると、昨夜の言葉を思い出してしまった。
 声色と視線と、その熱量と……。
 『行くな』と言った時、彼はどんな気持ちだったのか知りたい。

 だけど、あくまでも仕事を理由にしていたから、期待するだけ無駄だろう。
 離さないと言ってもらえただけ、秘書として十分幸せなことだ。


 ホットサンドが焼きあがり、三角に切り分けてプレートに乗せてテーブルに運んだ。


「いただきます」
「熱いので、気を付けてくださいね」

 ナイフで切り分けて息を吹きかけ、口に入れる。
 とろりとしたチーズとハムの塩気は、シンプルな味わいだけどとても美味しい。蜂蜜とブルーチーズを乗せて食べると、贅沢な朝食を食べている気分だ。

 いつもは色々話してくれるのに、彼は無言で食べている。
 仕事の話題でも振ってみようかなぁ。さっき話していた相手は誰だったんだろう。

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