毒舌社長は甘い秘密を隠す

「昨日のことだけど」
「っ……はい」

 先に、彼が沈黙を破ったので、返事に動揺が隠せなかった。


「どうしても、九条不動産に行きたいなら言ってくれ」
「……私は」
「答えを急かしているわけじゃないから、無理に言おうとしなくていい」

 社長についていきたいって言おうとしたのに、遮られてしまった。

 恋愛感情に突き動かされているだけじゃない。これまで彼の隣で働いてきて、とても有意義な毎日だったから、ずっとそばにいたいと思っている。
 だけど、落ち着いている彼を見ていたら、片想いを続けていく覚悟も必要なのだと気づいた。


「はい。決まったらご報告します」

 彼は、秘書としての私を評価して引き留めてくれた。
 九条さんは、日頃接する中での私を評価してくれている。

 どちらにしても、幸せなことだと思うのに、やっぱり社長と離れることを想像するだけで、心が締め付けられた。

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