毒舌社長は甘い秘密を隠す

「今日は、これから出る」
「どちらへお出かけですか?」
「実家に行く。帰りは明日の夜になると思うから、戸締りは頼んだよ」
「かしこまりました」

 朝食を済ませた彼はシャツに着替えて、麻のジャケットを持って出かけて行った。
 まだ十時過ぎだったので、一気に部屋の掃除や洗濯などの家事を済ませ、ソファに座って寛ぐことにした。

 もし私が会社を辞めても、後任の秘書がすぐに引き継いでくれるだろう。
 でも、彼の隣にいられなくなるのはつらい。
 私の意見や気持ちを尊重しようとしてくれている彼の心遣いが、なんだか寂しく感じた。


 ――〝行くな〟〝俺は、君を離さない〟 
 昨夜、彼にそう言ってもらえて嬉しかった。

 でも、〝好きだ〟とは言ってくれない。
 こんなに一緒にいるのに、なにも変わらないなんて、絶望的なのかもしれないなぁ。

< 262 / 349 >

この作品をシェア

pagetop