毒舌社長は甘い秘密を隠す
「今日は、どうしても沢村さんと話したかったの」
「どうしたんですか?」
九条さんにもそんなことを言われたと思い出し、勘のいい留美さんに社長への想いに気づかれないようにしようと気を張る。
「社長が異動になるって聞いた?」
「えっ!?」
「……やっぱり、まだ知らなかったみたいね」
突然のことに驚いている私を見て、彼女はやわらかく微笑んでみせた。
「昨日、常務が話してくれたの。来期から役員が変わるからって」
「だからって、どうして常務が留美さんに?」
「私もずっと秘書室に勤務してるから、誰かひとりくらいは耳に入れておかないとって思ったみたい。信頼されているのはありがたいけど、ことあるごとに情報を抱えさせられる身にもなってほしいものだわ」
ふっとため息をついた彼女は、ビールグラスを置いて私に向き直った。