毒舌社長は甘い秘密を隠す

 社長の隣にいたいのに、来期には必然的に離ればなれになるなんて……。
 どちらにしてもそうなるなら、先に九条さんの元へ転職した方が、諦めもつくのかな……。

 このタイミングで縁談話があるのも、彼が親会社を継ぐことになったからなんだろう。そうなると、ますます私なんて選んでくれる可能性は低そうだ。

 でも、昨日言ってくれた言葉に甘えてしまってもいいのだろうか。
 このまま、一緒に暮らしていていいの?
 いつかは、私を見てくれますか?


「どうしたら、ずっと一緒にいられるか教えて? ……響さん」

 彼の名前を口にしたら、涙がこぼれた。
 初めて彼の自宅から出勤した朝、冗談交じりに言われたことが思い出される。

 まるで新婚さんのような朝のやりとりが、くすぐったくてすごく嬉しくて……。
 いつまでもこの暮らしが続けばいいって思ってたのにな。

 広くて彼の匂いがするベッドで、揺れる気持ちを抱えながら夢に堕ちた。

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