毒舌社長は甘い秘密を隠す
「どうした?」
「……昨日、常務秘書の中里さんと食事をした席で、社長が来期異動されると聞きました」
「どうして、彼女がそれを知っているんだ?」
「常務が彼女を非常に信頼しているのはご存じだと思いますが、大きな人事異動なので前もって秘書室内のひとりくらいには、耳に入れておこうと配慮くださったようです」
そうか、と返してきた彼は、グラスにビールを注いでひと口含んだ。
「そこで、ご相談なのですが」
改まって話す私に、彼はローテーブルにグラスを置いて向き直った。
精悍な顔立ちに、まっすぐな眼差し。笑うと目尻が下がって優しくなるのを知ったのは、いつだったかな。
秘書として近くに置いてもらうようになってから、一層彼の魅力を目の当たりにした。
急成長する社を発展させつつ、顧客の目線に立ったサービスを展開する社長の敏腕ぶりには、本当に尊敬の念を抱いてきた。
彼が仕事をしている時、どうしたらもっと秘書として役に立てるか、社の利益になるような働きができるかを考えて、そんな時間が楽しくてしかたなかった。
だから、終わらせたくない。
もっともっと、彼と一緒にいたい。