毒舌社長は甘い秘密を隠す
急いで帰り支度をして席を立つと、廊下にいると思っていた彼の姿がない。
電気を消して、エレベーターホールに向かうと、彼が待っていてくれた。
仕事中なら彼を待たせるなんて許されないのに、最近はそういうことは気にしなくなったのか、怪訝にされることもなくなった。
「すみません、お待たせしました」
「なにが食べたい?」
「社長の食べたいものにしましょう」
「君の褒美だって言っただろう?」
「……では、ちょっとお洒落なお店に行ってみたいです」
彼は食通だし、客先との会食で様々な店に行っているから、私の舌を満足させるのは容易いはず。
だから、せっかくなら自分では行かないようなお店に連れていってもらおうと思ったのだ。
エレベーターを降り、正面入口から表に出た。
外出先から帰社した社員が会釈してきても、私たちが一緒にいることが普通と思われていて歯がゆい。
「品川までお願いします」
常駐しているタクシーに乗り込むと、彼は行先を伝えた。