毒舌社長は甘い秘密を隠す

 彼がロビー階の一角にある階段を下りていく。私を気遣って手を繋ぎ、ゆっくりとした足取りでエスコートされると、本当にデートをしているみたいだ。


「社長は、このホテルによくいらっしゃるんですか?」
「この店が好きで来るだけだ」
「なんのお店ですか?」
「シガーとワインを楽しむバーだよ。食事も美味しいし、隠れ家みたいで好きなんだ」

 気に入っているお店に連れてきてくれたんだ……。ちょっと嬉しいなぁ。
 普段、彼が自宅と会社以外のどんなところで過ごすのが好きなのか知らなくて、気持ちばかりが逸っているのが切なかったから。


 丁寧にお辞儀をして出迎えてくれた男性店員に続いて、ソファ席とバーカウンターのある店内へ。
 だけど、案内されたのはガラス扉の個室だった。

 室内から見る店内は、まるで映画のワンシーンに出てきそうなほど印象的だ。
 私がなにも言わなくても、気に入ったと伝わっているのか、彼は小さく微笑んでいる。

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