毒舌社長は甘い秘密を隠す
暖色の間接照明があちこちで灯る店内には、ワインセラーとシガーロッカーが設けられていて、それだけでも非日常的。この個室内には壁にワインのコルクを使って描かれた肖像画が飾られている。
総革張りのソファ席には紳士的なスーツ姿の男性たちがいて、カウンターでは親しげにバーテンダーと話しながら葉巻を燻らせている男性と、デートをしている様子の男女の姿もある。
社長のように、この店を利用するだけのために訪れた人も多そうだ。
そして、会話の合間を繋ぐように流れているジャズが小気味よく、お洒落な雰囲気に馴染ませてくれるように感じた。
「好きなものをなんでも食べていいから」
店員が水と一緒に持ってきたメニューを手渡された。
彼はなにもせず、ただテーブルの対面にいる私を見つめているだけ。
「そんなに見ないでください」
「君がなにを食べようか考えてるところ、かわいいなぁと思って」
「っ!?」
社長って、そんな甘いことを言うタイプだった?
不意をつかれた私は、メニューを広げて目の高さまで掲げ、彼から顔を隠した。