毒舌社長は甘い秘密を隠す

「最近もいらしたんですか?」
「先月だけどな」

 ……もしかして、留美さんと汐留の高層階の店で食事をして帰った日だろうか。
 そうだとしたら、彼は女性と一緒だったはず。


「あの女性といらっしゃったんですか?」
「誰のこと?」
「ご自宅の前まで、一緒にタクシーに乗ってきていた方です」
「……あぁ。違うよ、彼女とじゃない」

 思い出した様子だけど、彼は間を置くことなく否定した。
 じゃあ一体誰とこんな素敵なお店に?

 社長は放っておいても女性が寄ってくるだろうから、選び放題だとは思うけど……。縁談の相手は海外の令嬢だから違うはず。
 彼の特別になりたいけれど、奥さんにはなれない私は宙ぶらりんな関係で嫉妬するばかりだ。 

 そんなことを考えていると、店員が料理を運んできた。
 チーズとハムの燻製、採れたて有機野菜のバーニャカウダ、鯵の香草パン粉焼きが並び、あっという間に長方形の四人掛けテーブルが彩り鮮やかになった。

< 285 / 349 >

この作品をシェア

pagetop