毒舌社長は甘い秘密を隠す

 聞いてきたのは彼なのに、それ以上なにも言わずに食事をする彼の様子をうかがう。

 姿勢を崩すことなく過ごす彼は、まさに私の理想の人。凛々しくて、尊敬できて……。
 でも、それを口にしたら彼はどうするんだろう。
 縁談を控えているのに、私と一時的な恋愛を楽しもうとするだろうか。
 もし、そんなことになったら、いくら春になって異動したとしても、社長室で働く彼の影を思い浮かべるに違いない。


 店員がやってきて、次の料理を並べた。
 いくらと大葉としらすのペペロンチーノ、熟成仔羊のローストと黒毛和牛のビーフシチューと告げられ、量がありすぎて食べきれないのではと心配したけれど、パスタは上品な量で食べきれそうだし、仔羊のローストもふたりでワインのあてにするにはちょうど良さそうで安心した。


「どちらになさいますか?」
「うーん……カベルネ・ソーヴィニヨンにしてください」

 店員が持ってきたリストを見て、彼はあまり迷うことなく選んだ。

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