毒舌社長は甘い秘密を隠す
「あ、その名前は聞いたことがあります」
「有名だからね。これは、カシスやミント、チョコレートの香りに例えられることがあって、フランスのボルドー産。ちょっと渋みがあって力強さもあるけど肉料理には合うし、上品なコクと華やかさを感じられるんだ」
「本当、お詳しいですね」
「好きなものはとことん好きになるタイプなだけ。俺なんかよりもっと語れる通はごまんといるよ」
深い赤がとても綺麗だ。
注がれたグラスを掲げて見つめていると、その向こうで彼がゆったりと微笑んだのでドキッとした。
「今日のワインは大切な人と飲むためのものなんだ。この前、立ち寄った時にいろんな品種で数本キープしておいたんだよ」
「そんな大切なものを開けてしまっていいんですか!?」
白ワインはしっかり私のお腹に入ってしまっているし、高そうな赤ワインもコルクが抜かれたばかり。もうどうにもできそうにないけれど、どうしてそんなものを……。
「君と飲むために、仕事の後に立ち寄ってキープしておいたんだ。今日開けなくてどうする」
「私と、ですか?」
「好きな女性を口説くための、とっておきのワインなんだ」