毒舌社長は甘い秘密を隠す
高層階専用のエレベーターから降りると、内廊下に艶黒の大理石が敷かれていた。
しんと静まり返ったフロアを歩き、【4501】の表札がある部屋の前まで、担当者が案内してくれた。
玄関のインターホンを鳴らすものの、すぐに応答はない。
これだけのマンションなのだから、きっと社長が住む部屋も広いのだろう。それに、体調が悪ければ動くのもひと苦労だ。
呼出音が切れてしまったのでもう一度インターホンを押す。
三度繰り返しても応答がなく、さすがに心配になってきた。
ドアレバーを引いてみようと思って手を伸ばしたら、ちょうど社長が迎えてくれた。
「悪いな」
「お気になさらないでください。それよりも本当に大丈夫ですか?」
「……まぁ、とりあえず入ってくれ。ここで立ち話するのは好ましくない」
「お邪魔いたします」
初めて入った社長の自宅は天井が高く、とても広々としているのが想像できた。