毒舌社長は甘い秘密を隠す
ロビーに戻ると、ふたりは併設のカフェに場所を移すところだった。
パーティーが始まるのは三十分後だから、まだゆっくりできそうだと腕時計を見て確認した。
「失礼いたします。九条さん、先日はありがとうございました」
「いえいえ。またよかったらお食事に行きましょう」
九条さんは、今の私と社長の関係を知る由もなく、気軽に誘いを口にする。
「もう少し九条さんと話すから、君もよかったらなにか飲み物を頼みなさい」
「ありがとうございます」
だけど、社長はまったく表情を変えずに気を使ってくれた。
少しくらい妬いてほしいなんて場違いとわかっていても、あんなに熱い瞳と言葉で引き留められたり、告白されたりしたから、どうしても意識してしまう。
ふたりは仕事の話を交えて談笑しているけれど、これほど自分のことで気を使う場面は久しぶりだ。
「それはそうと、うちの秘書を引き抜くおつもりのようですね」
だけど、注文したアイスコーヒーが届いて五分ほどで、社長が不意に話を切り出し、和やかだった空気が張りつめた。