毒舌社長は甘い秘密を隠す
ホテルが用意したハイヤーに乗り込むと、彼は晴海までと告げた。
首都高速を走り抜けるハイヤーの中、ビルの合間を縫うような景色が車窓を流れていく。
まだ夕方なのに、彼は社に戻るつもりはないようだ。私も、今日は直帰すると言ってあるから問題はないけれど、なんだか後ろめたい。
ずっと繋がれた手は、すっかり温もりがひとつになった。
ドキドキする胸の奥の震えが伝わってしまわないかと気がかりになる。
「社長、気分を害すようなことがありましたか?」
「大アリだ」
聞かずとも分かっていたけれど、九条さんに煽られたままで虫の居所が悪そうだ。
だけど、私のことでそこまで乱される彼の様子がちょっと嬉しくもなる。
「私、きちんとお断りしましたよ?」
「そうだな」
不機嫌をてんこ盛りにしたような彼が、隣に座る私を力強く引き寄せた。
「九条さんもこの話はなかったことにしてくださったじゃないですか」
「だから?」
彼は、眉間に甘やかな皺を薄く寄せる。
そして、切なげに見つめる瞳に私を取り込んだまま離してくれない。
「すごく妬いた」
「えっ……」
「俺以外に心を許すな」
彼が零した本音に驚かされている間に、唇が触れた。