毒舌社長は甘い秘密を隠す
彼の自宅に帰るなり、リビングまで手を引かれた。
「優羽……」
トレンチコートを脱ぐ間もなく、持っていたバッグが床に落ちても気にせず彼がきつく抱きしめてきた。
「社長、どうしたんですか!?」
胸の前で両手を縮めた私は、勢い余る彼の行動に目を丸くした。
私の問いかけに答えることなく、彼は大きく息をつく。
「好きすぎて、どうしていいかわかんなくなった」
「……社長」
「お前、いい加減俺のことが好きって認めろよ。いつまで駆け引きするつもり?」
「わ、私はっ……」
想いを伝えていいなら、とっくに告げているだろう。
でも、彼には縁談があるから、振られると分かっている恋に踏み出せないだけだ。
九条さんのことはあったにせよ、彼の言動には振り回されてきたのだ。
だから、駆け引きなんてしているつもりはなくて……。