毒舌社長は甘い秘密を隠す

「いつまで隠し通されるつもりですか?」
「なにを?」

 社長は聞き返しながらも、私に席に戻るように目線で合図を送ってきた。
 なんとなくまずい展開になると予想したのだろう。


「沢村さん、まだ打ち合わせが残っていますけど」
「あ、そうでしたね……」

 だけど、千堂副社長に話の途中だと言われ、自席に戻るタイミングを奪われてしまった。


「おふたり、お付き合いされてますよね?」
「千堂、なにを根拠に」

 社長は平然として隠そうとしているけれど、副社長は確信を得ている様子だ。
 私は固唾をのんで、コの字型に置かれたソファセットの一角に戻ると、副社長にまっすぐ見つめられてしまった。


「二、三カ月ほど前に、東央百貨店でお買い物されていましたよね。ご安心ください。おふたりのことは口が裂けても誰にも言いません」

 驚いている社長と私をよそに、副社長は用意した資料を見ながら、持ち込んだノートパソコンで引き継ぎのメモを取り始めてしまった。
 
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