毒舌社長は甘い秘密を隠す

 十五分ほどで、コンシェルジュが食材を買い揃えて届けてくれた。
 額に貼る冷却シートも頼んだから、社長の体調が思わしくないと気づいたようで、「どうぞお大事に」と丁寧に声をかけて戻っていった。

 さすが、高級マンションのサービスは違うなぁ。
 社長秘書とはいえ、あくまでも普通の生活をしているから、ここまで至れり尽くせりな生活を見せられると憧れてしまう。

 ……あ、そうだ。九条さんに今度会ったら伝えてみよう。
 他にも同じようなサービスのあるマンションはあるだろうし、きっと九条さんにもこの暮らしは似合う気がした。


 お洒落なアイランドキッチンは、使い勝手がいい。
 リビングを囲む大開口の窓から望む都心の夜景は、キッチンからも見えて気分が上がる。
 社長の体調が悪いのに、ウキウキしてしまって悪いと思いつつ、初めて入った超高級マンションに心は弾みっぱなしだ。


 二十分ほどで、おろし生姜と刻んだネギを添えた温うどんを作った。食欲がなくても、うどんなら喉越しがいいから食べやすいだろう。
 一緒に作った野菜粥と鶏ひき肉のそぼろは、食欲がわいたら食べてもらおう。

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