毒舌社長は甘い秘密を隠す

 そういえば、社長は特別な相手はいないのだろうか。
 当然いるものだと思っていたのに、こんな時に頼ってきてくれたのは秘書の私だ。

 男性は、好きな人に弱った姿を見せたくないものだと聞いたことがあるから、そういうことなのかなぁ。

 だけど、冷蔵庫の中は絵に描いたような男性のひとり暮らしそのものだったし、キッチンだって新品同様に綺麗で……。


 井浦社長のような容姿の整った男性は、女性に困ることはないだろう。
 どういうところで女性と知り合うのかわからないけれど、社内や取引先にも素敵な女性は大勢いる。
 先輩秘書によると、言い寄られて困ったこともあったらしいし、現実的に考えれば彼女くらいいるはずなのだ。

 秘書だから、こうしてお邪魔して看病しているだけ。
 もし私が秘書の職に就いていなかったら、こんな状況にはなり得なかっただろう。

 でも、どうして私に連絡をくれたのか、なんとなく気になってしまった。

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