毒舌社長は甘い秘密を隠す

 自動で明かりがつき、足元には真っ赤な薔薇の花びらがたくさん散っている。
 視線を室内に向けると、部屋の奥まで花びらの通路が繋がっているようだ。

 導かれるように足を進める。
 スイートルームというだけあって、とても広いリビングの真ん中に立つと、今度は明かりがパッと消えてしまった。


 自動で開いたカーテンの向こうに、ドラマティックな夜景が広がる。

「わぁ……すごい」

 日頃よく目にする東京タワーと、高層ビルのネオンが煌めき、通りを行く車のテールランプが点線の模様を作っているように見える。
 彼の自宅からの景色も圧巻だけど、近くで見る景色も目を瞠るほど綺麗だ。


「優羽」
「っ!? 響さん?」

 いつの間にいたのか、彼が私を包み込むように抱きしめてきた。
 彼の手はとても暖かい。
 外の風を浴びてきたはずなのに、コートも着ていない。


「どうしたんですか? 今来たんですよね?」

 なんだか不思議なことの連続だったから、彼に尋ねずにいられなかった。


「優羽が来る少し前に着いて、待ってたんだ」
「……そうだったんですか? でも、どうして?」
「今日はバレンタインだろ?」

 そう言うと、彼は私と向き合い、手にしていたリングを差し出した。

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