毒舌社長は甘い秘密を隠す
「これでお願いします」
会計をするのに、彼は躊躇なくカードを出した。
ただの秘書と休日に出かけることはないだろう。それに、靴を買ってあげるようなこともないはず。
絶対にふたりは付き合っている。
その確信を得て、俺は百貨店を後にした。
――それからというもの、ふたりを見ているとよそよそしくて、相変わらずこっちが焦れったくさせられてばかり。
社内でいちゃつくわけにいかないのは分かるけど、この目で見たあの日のことを、いつ打ち明けようかと考えるだけでわくわくする。
社長の弱みや秘密を知って、どうにかしようとは思わない。
彼を蹴落として、俺が社長の座に就こうという、下剋上のような策略もない。
俺はただ、彼が興したこの会社を、もっと大きくするために尽力したいだけ。
そのためには、彼のことを何でも知りたいんだ。
俺が尊敬する〝井浦響〟という男も、ひとりの女に恋をしたら〝ただの男〟でしかないはずだから。