毒舌社長は甘い秘密を隠す
スリッパの踵を引きずって歩く社長のあとを追う。
壁に手をついているその姿に、なんとかして楽にさせてあげたいと思った。
今日だけならまだしも、明日は出社してもらわなくては困るし、この二年間浴び続けてきた毒舌がないと、不思議なもので調子が出なかった。
ダイニングチェアに座った彼の前に、常温の水とスポーツドリンクをそれぞれグラスに注いで置く。
備え付けの棚にしまってあった丼ぶり皿にうどんを盛って、箸と一緒に用意した。
「具はないのか?」
「食欲がないと仰っていたので、まずはこのあたりからお腹に入れてください」
「……味気ないな」
せっかく人が作ったというのに、この人は!
一瞬ムッとしたけれど、なんだかんだ食べ始めた彼の様子をテーブルの反対側から見つめた。