毒舌社長は甘い秘密を隠す
湯気の立つうどんに息を吹きかける唇が、なんだか色っぽい。
元々、入社してから秘書になるまでは、社長に恋をしていたから、普段あまり見れない姿にきゅんとする。
「……君は食べないのか?」
「帰宅すれば、自炊した食事がありますので」
「そうか。……悪いな、面倒をかけて」
「いえ、秘書として当然のことをしたまでです。もし食欲があるようでしたら仰ってくださいね。精が付くものをお作りします」
ひどい風邪というわけでもなさそうだし、食べてひと晩ぐっすり眠れば、きっと明日には治っていそうな気がする。うどんもあと少しで完食する勢いだ。
「他の男にも作ったことはあるのか?」
「……どういう意味でしょうか?」
突然の問いかけに疑問を投げると、彼は口を噤んでうどんを食べきった。
「ごちそーさん」
彼は私の質問に答えず、水を飲んで大きく息をついた。