毒舌社長は甘い秘密を隠す
「お薬、飲みましょう。それから、冷却シートを買ったので額に貼ってください」
「いろいろとすまない」
「気にしないでください。今夜中に快方に向かっていただければ、私は十分です」
「……そうか」
リビングのローテーブルに放り投げてあった市販の風邪薬を持ってきた私は、必要量を彼の手のひらに落とした。
水で飲みこむその横顔に、つい見入ってしまう。
上下する喉元に、胸の奥がざわめく。
「美味かったよ。あとで、野菜粥もいただくことにする」
「そうしてください。お口に合ってよかったです」
ゆっくり立ち上がった彼は、リビングのソファに向かい、崩れるように大きくもたれた。
「大丈夫ですか?」
「腹が満たされただけだ。心配しなくていい」
「それならいいのですが……」
心なしか顔の血色がよくなってきている。このまま本調子に戻ってくれたらと願った。