毒舌社長は甘い秘密を隠す

「それでは、私はそろそろ失礼します」
「もう少し付き合ってくれないか?」

 もしかしたら、久々に体調を崩して心細いのかなぁ。
 まさか、社長がそんな気分になるとは思えないけれど。


「構いませんよ。社長の気が済むまでおります」

 そう言うと、彼はソファに来るようにと、空いている隣を叩いて私を招いた。


「許可を得なくてはいけないような相手、いないのか?」
「業務外ですので、控えさせていただきます」

 躊躇なく社長の自宅で過ごすことを了承したら、不意を突く質問が返されて内心驚いた。
 まったくこんな社長じゃなかったら、もっと仕事がしやすかったかもしれないのに……。

 でも、井浦社長以外の人だったら、秘書として仕えていなかっただろう。
 仕事において尊敬しているからこそ、彼の身勝手や毒舌にもついていけるのだから。

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