毒舌社長は甘い秘密を隠す
「なにかいいことでもあったか?」
「特別ありません」
「……ニヤニヤしてる暇があるなら、さっさと仕事をしてくれ」
顔や態度に気持ちが出ないようにしていたはずなのに、社長といられるのが嬉しくてつい頬が緩んでしまっていた。今まで何度となく同じようなシチュエーションはあったのに、気持ちを自覚してからは特別な時間だから……。
「失礼いたします」
気を取り直して秘書室に戻り、自席に着く。
どうしたら、社長に意識してもらえるんだろう。
私から告白なんてできるはずもないし、かといって社長が私に恋をしてくれるなんてありえないのに、それを望んでしまうくらいに欲張りになる。
昨日みたいに、もっと甘えてくれたらいいのになぁ……。
でも、社長に限ってそんなことはなさそうだ。