毒舌社長は甘い秘密を隠す

「なにかいいことでもあったか?」
「特別ありません」
「……ニヤニヤしてる暇があるなら、さっさと仕事をしてくれ」

 顔や態度に気持ちが出ないようにしていたはずなのに、社長といられるのが嬉しくてつい頬が緩んでしまっていた。今まで何度となく同じようなシチュエーションはあったのに、気持ちを自覚してからは特別な時間だから……。


「失礼いたします」

 気を取り直して秘書室に戻り、自席に着く。

 どうしたら、社長に意識してもらえるんだろう。
 私から告白なんてできるはずもないし、かといって社長が私に恋をしてくれるなんてありえないのに、それを望んでしまうくらいに欲張りになる。

 昨日みたいに、もっと甘えてくれたらいいのになぁ……。

 でも、社長に限ってそんなことはなさそうだ。

< 55 / 349 >

この作品をシェア

pagetop