毒舌社長は甘い秘密を隠す
――翌日、金曜の夕方。
予定通りに九条さんが来社され、社長が直々に出迎えた。
だけど、秘書室の前を彼らが通っただけで、居合わせた秘書たちは一斉に頬を染める始末だ。
日頃の毒舌を隠した井浦社長と、紳士的で上品な九条さんが肩を並べて通路を歩き、社長室に入っていく数秒の出来事だったのに。
「九条さんも、相変わらず素敵ね」
「そうですね。お話させていただいても、やわらかな口調で癒されます」
「沢村さん、誰と比べてるの?」
留美さんに言われて、すかさず私は小さく微笑み返した。
言わずとも、『うちの井浦社長以外におりません』と伝わったようだ。
「毎日よく耐えてるよ、本当。えらいえらい」
留美さんはそう言ってくれるけれど、このところ幸せで楽しい毎日だ。