毒舌社長は甘い秘密を隠す
「帰るよ」
「いつですか?」
「気が向いた時に」
「それって、ここにお泊まりになられる可能性もあるということですよね? 社長、先日のことをもうお忘れですか? 九条さんだってご都合をつけて今日来社されたんですよ。他のお客様や業務だって、調整しなくてはいけなかったんです」
「わかってるよ」
まぁ、そうだろう。こんなことを秘書に言われなくたって、社長ともなれば重々分かっているはずだ。
「だったら、今すぐご自宅にお帰りいただけますか?」
「うるさいなぁ。お前は俺の嫁にでもなったつもりか?」
「よ、嫁っ!?」
「……真に受けるな。調子が狂う」
お酒を飲んできた様子の彼は、立ちふさがっていた私の横を通り過ぎ、スーツが汚れることを厭わずに干し草が敷き詰められている柵の中へ歩いていく。