毒舌社長は甘い秘密を隠す

「……よし、じゃあまたな。おやすみ」

 懐いているアルパカたちを一頭ずつ撫でている社長は、ズルいくらいに格好いい。

 誰よりも社員のことを考えていて、どんなに忙しくてもにこやかな彼が近しい社員にだけ毒舌で冷たいのは、きっと気を使わずにいられる仲でいたいからなのかもしれない。
 ……とはいえ、やっぱり優しくしてほしいけれど。

 無表情で見つめられるだけでもドキドキするのに、この様子だと私の気持ちには一生気づくことなんてないだろうなぁ。
 社長の背中を見つめながら、そっと苦笑いをした。


「さて、帰るか」
「はい」

 ガラス戸のセキュリティーをONにして、先に歩きだした社長の背を追う。


「エレベーターでお待ちしております」
「わかった」

 バッグを取りに社長室に立ち寄っている彼を、エレベーターの前で待った。

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