毒舌社長は甘い秘密を隠す
不意にインターホンが鳴った。
彼は渋々私を解放してソファから腰を上げ、応答している。
「ふぅー……」
数分ぶりにまともに息をした気がする。ドキドキする胸を抑えるように手を当てて深呼吸していると、彼はリビングを出て玄関へと向かった。
「さて、作るか」
戻ってきた彼は、コンシェルジュから受け取ったスーパーのビニール袋をダイニングテーブルに置くと、パスタ麺とホールトマトの缶詰などを取りだしている。
「社長、お食事は済まされてきたはずでは」
「君はこれからなんだろ?」
「そうですが……」
Yシャツの袖を適当に捲り上げた彼は、アイランドキッチンで手を洗い、鍋などの調理器具を用意しはじめた。