毒舌社長は甘い秘密を隠す
「少し待っててくれ」
「もしかして、私の食事をご用意されるおつもりですか?」
パスタ鍋に水を入れ、火にかける彼をキッチンの向かい側から止めようとするも、手慣れた様子で塩を入れて、ひとり分のパスタを目分量で計っている。
「食事を後回しにさせて、俺の相手をさせるのはパワハラになりかねないからな」
「それは申し訳ないので、帰りに自分で外食でもします」
「いいから、君は座っていなさい」
パワハラがどうとか気にする以前に、こうして強引に自宅に連れ込まれて抱きしめられたのは〝セクハラ〟なのでは……。
でも、私自身少しも嫌だと思っていないし、社長だってそんなつもりはまったくないだろう。
それどころか、留美さんから社長に恋人がいないことを聞かされた後だから、この状況に期待してしまう自分もいる。
社長はいったいどういうつもりで私を自宅に連れてきたんだろう。