毒舌社長は甘い秘密を隠す

 沸騰した湯にパスタを綺麗に広げて入れた社長は、手際よくソースを作り始めた。
 フライパンにオリーブオイルを引き、炒めた牛ひき肉にホールトマトを潰して合わせている。


「社長、料理するんですか?」
「気が向いた時だけな」
「……意外です」

 この前から、社長の知らない一面を見せられてばかりだ。
 アイランドキッチンで料理をする彼の姿は素敵すぎて、ついつい見惚れてしまう。


「どうした? アホ面で人のことをじっと見て。口から涎がこぼれてるぞ」
「えっ!?」

 慌てて口元を手で拭う。
 だけど、そんな私を見て社長は薄く微笑みかけてきた。

 騙されたのだと分かって悔しいのに、彼が格好良くてハッとさせられてしまうなんて……。

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