毒舌社長は甘い秘密を隠す

「……!!」

 衝撃的な美味しさに、言葉がでない。
 一流店で出せそうなほどの味に感動してしまった。


「どうだ?」
「あの……社長は、本当に器用な方なんですね。たまに作る食事がこんなに美味しいなんてすごいです」
「そうか? チャチャっと作っただけだろ。君だって目の前で見てた通り、手の込んだことはしていない」
「それでも、とても美味しいです」

 私が絶賛すると、満足げな微笑みが返されてドキッとした。

 いつもは冷たい顔しか見せてくれないのに、今日に限って彼はなんだか優しい。


 ……あ、違う。強引に連れ込まれて部屋着まで着せられていたんだったっけ。

 社長自ら、私のためにキッチンに立ってくれたことも驚きだったし、作ってもらったパスタも美味しすぎて、完全に胃袋を掴まれてしまったせいで、あやうく勘違いするところだった。

 社長に、私と同じような気持ちを期待するだけ無駄なのに、そうだったらいいと願ってしまう。

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