毒舌社長は甘い秘密を隠す

「もういいんじゃない?」

 長い腕が伸びてきて、センサーに大きな手がかざされると、水が蛇口から流れる。
 この前は最新設備が導入されているキッチンに感動したけれど、今はそれどころじゃない。


 社長の甘い声が近くて、胸の奥で密かに鳴る鼓動が止まらない。
 クールでほんのりセクシーな香水の匂いと、清潔感のある食器洗剤のミントの香りが、この距離を意識させる。


 今、振り向いたらどうなるんだろう。

 社長はどうしてこんなことをするの?


 動揺で手を止めていると、彼は私からお皿を取って、後ろに立ったまま泡を洗い流す。
 私の手の泡も洗い流されて、タオルで拭かれた上に袖まで元通りだ。


「部屋着、濡れてないか?」
「……大丈夫です」
「そうか」

 私の背中を包む彼の腕の中から動けず、されるがままに立ちつくす。

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