毒舌社長は甘い秘密を隠す
だけど、彼だっていつまでも苛立っている。
とはいえ、それを指摘すれば逆効果だし、これ以上の関係悪化は避けたいのが本音。
「はぁ……」
エレベーターの到着を待つ間、そっと小さなため息をひとつ。
だけど、彼に気づかれてしまって、すかさず視線をそらした。
「君は、そんなに俺が嫌か」
「……えっ?」
予想もしなかった言葉に、思わず聞き返さずにいられない。
「それなら、他の者の秘書に付いたっていい」
「私は、微力ながら社長にお仕えしたいと」
「……出先で話すことではなかったな」
到着したエレベーターに乗り込むと、受付の女性が階数ボタンを押して丁寧に見送ってくれた。
ふたりきりがこんなに気まずいなんて、秘書になって初めてだ。
今までどんな毒舌にも無茶振りにも耐えてこれたのは、彼を尊敬していたから。
だけど、今は……拒絶されているような気がする。
私の接し方が、彼には可愛げなく映ったのかもしれない。