愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~
ふたりで電車に乗り、数駅先の大きな街へとでる。
先生が行ったことがあるというイタリアンへ行った。外観は洋風でとてもオシャレだったが、値段もリーズナブルで女性が好みそうなお店だ。私もまた来たいと思った。
「先生はよくこういったお店に来るんですか?」
「良くは来ないけど、女子って好きだろ? こういう店」
確かに周りは女性がほとんどだ。つまりは、先生は前に女の人と来たことがあるということだろう。
それに一瞬、胸がチクンと痛む。
「いろんな女性と来たんでしょうね」
気が付けばついそんな棘のあるような言い方をしてしまったが、当の藤堂先生はそれを「ふっ」と鼻で笑った。
「焼くなよ」
「焼いてませんけど!?」
「ここはさっき電車で調べた。来たのはお前とが初めてだよ」
ムッと言い返すが、間髪いれずに先生が微笑みながらそう言った。
そしてニヤリと私の顔を見てくる。
「えっと……」
どんな反応を返していいかわからなくて、運ばれてきたパスタを丁寧に巻く。
「面白いやつだな」
先生は笑いをこらえていた。
そして、食後のデザートを食べてトイレに立っている間に先生はサラッと支払いを済ませてしまったのだ。
「いくぞ」とレジを通り過ぎてから初めてそれに気が付いて、せめて自分の分は自分で出すと財布を開けるが制止されて断られてしまった。
「これじゃぁ、お詫びにもならないですよ」
「でも、ランチくらいで割り勘ってのも好きじゃねーし。たいして高いわけでもなかったし」
「だから、奢るのに」
お店を出て、ブーブー文句を言う私に先生は苦笑した。
「こういうときは奢られてろ」
「……ごちそうさまでした」
ペコリと頭を下げると、その頭をポンッと撫でられる。
「そういえば、この映画公開したのか」
先生の視線を辿ると、目の前にあった映画館のポスターに向けられていた。
この映画とは、最近話題になっていた時代物の洋楽で今年のアカデミー賞候補にもなるだろうと言われている作品だ。
「あ、私もこれ観たかったんですよね」
「見てく?」
上映時間を見ると、一時間前だ。中に入って掲示板を確認すると、客席もまだ少し空いているようだった。
「じゃぁ、ここは私が出します」
「いいよ、映画ってそこそこするだろ」
「ここの割引アプリあるので大丈夫ですよ」
そう言ってレジへ並んだ。