恋を知らない
ぼくは声をひそめた。
「で、なんなんだ?」
「さっきの女の子、シュウの知り合いか?」
顔がくっつきそうになるほどの距離から、じっとぼくの目をのぞきこんで、キョウが訊ねる。今にも殴られそうな気配だった。「めぐみ」のことを言っているのはすぐにわかった。
「いや、知り合いっていうか……一度、リボンを拾ってあげただけだよ」
ぼくは3週間前のできごとを手短にキョウに説明した。
「それで?」
「それで、って……先週、またちょっと街で見かけて、建物にまぎらわして写真を1枚撮った」
「ほかには?」
「なにもないよ。ただちょっとかわいい子だと思っただけで」
「ネットで検索は?」
畳みかけるようにキョウが訊いてくる。顔写真のデータがあれば、ネットで検索して本人を特定できる可能性がある。
「してないよ」
ネットで検索すれば跡が残る。そういったものはマリアロボットに筒抜けになる。それがわかっているから、しなかった。