恋を知らない
「本当だな?」
「ああ」
「するとこういうことだな? どこのだれかは知らないけど、街でかわいい女の子を見て、こっそり写真を撮った、ただそれだけなんだ、と?」
「ああ」
「あー、よかったァ」
キョウの緊張がとけた。ぼくから離れ、ドアに背をもたせて、あからさまにホッとしていた。
「さっきの様子じゃ、向こうはカレシもいたみたいだし、大事にはならんだろう」
「カレシ」という言葉に、ぼくは心臓にズキンとナイフを突き立てられたような気持になる。「めぐみ」のあのかわいらしい笑みが「カレシ」に向けられていたことを知ったときのショックがよみがえってくる。泣きたい気分でキョウに当たった。
「なんなんだよ、一体。ちょっと勘違いして女の子に手を振ろうとしただけだよ。それがそんなに悪いのか?」
「ああ、何もしないにこしたことはない。女の子とはしゃべらない。目も合わせない。それが一番だ」