恋を知らない
「よせよ」
ぼくは邪険にマリアの手を払いのけた。
「めぐみ」のことで動揺していて、とてもそんな気分じゃなかった。
マリアがぼくの耳にささやいた。
「ねえ、シュウ、したいんだったら、あたしはいつでもオーケーよ」
一瞬、何のことかわからなかった。ロボットのくせに何を寝ぼけているんだと、にらみつけてやるつもりでマリアに目を向けた。
ぼくの肩にぴったりと寄りそったマリアは、まっ赤なルージュを塗った唇をニッとつり上げ、妖艶な笑みを浮かべて、からかうようなまなこでぼくをじっとのぞきこんでいた。
マリアは、うふふふ、と声に出して笑いながら、ぼくの下腹部をまさぐってきた。
「おい、よせよ、こんなところで」
「シュウはもうこんなに元気」
「え?」
ふいに気がついた。
マリアの言うとおりだった。ぼくの下腹部は、今にもセックスに突入しそうなほどに熱を帯び、興奮しているのだった。