恋を知らない

「やっぱりシュウには同世代のカノジョが必要なんだって思った。今までシュウは一度もチェンジしたことないでしょ。機構と相談して、お試し、ということで、特別にこの子を作ってもらったのよ。ねえ、気に入ってくれた?」

「めぐみ」の姿をしたマリアが腰の後ろで両手を組み、小首をかわいらしくかしげて、一歩一歩ぼくのほうへ近づいてくる。

ぼくは首をふりながら、一歩ずつ後じさっていく。

「ぼくは……そんなこと、頼んでないよ」

「だから、あたしからシュウへのプレゼントなの。ねえ、喜んでくれるでしょ? シュウの好きなようにしてくれていいのよ。この子とだったら、1日に2回でもセックスできるでしょ?」

「……なんだよ。結局、それが目的か。ぼくの精子を搾り取ろう、って魂胆だろ?」

「うふふふ」

後じさりしているうちに、背中が壁にぶつかって、もうそれ以上はさがれなくなった。

「めぐみ」のマリアが微笑みながら、顔を近づけてくる。「めぐみ」の体はマリアより背が低くて、顔がぼくの胸のあたりまでしかこない。

「めぐみ」のマリアが伸びあがって、ぼくの首に抱きついてきた。リップだけを塗ったらしい唇がピンク色に艶やかに光っている。

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