恋を知らない
「よせ」
「ねえ、シュウ、キスして」
「よせ」
「好きなんでしょ、この体の女の子のこと? セックスしてかまわないのよ」
「そんなんじゃないよ。セックスしたいとか、そういう気持ちじゃないんだ」
「だって、好き、っていうのは、生殖を開始するための発火点になる感情でしょう? 自分と相手のDNAを組み合わせたい。本能的にそう感じる気持ちが、好き、っていうことだわ。人間はそうやって、自分のDNAを残してきたのよ」
「違う。そんなんじゃ……」
ぼくはうまく言えなかった。女の子をかわいいと思い、ひそかに好きでいることと、セックスしたいと思う気持ちの違いを説明できない。
「ううん、そうなのよ。シュウが自分で気づいていないだけ。ほら」
「う」
「めぐみ」のマリアが片手を首から外して、ぼくの下腹部をさすった。
「ほら、こんなになってる」
「……」