赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「な、なんなんだあいつは!」
目を剥いて叫ぶメドレスは慌てて逃げようと立ち上がると、なぜかこちらを見た。
(嫌な予感がする)
そう思ったのもつかの間、こちらに走ってくると手を伸ばしてくる。
とっさにアルファスを突き飛ばしたシェリーは、逃げ遅れてメドレスに羽交い絞めにされてしまう。
「はっ、離して!」
おもいっきり暴れた拍子に帽子が外れてしまい、隠していた長い髪が露わになる。青いリボンがひらひらと舞うのを呆然と見つめた。
「おおっ、なんたる美しい薄桃色の髪。お前は女だったのか!」
感嘆の声を上げるメドレスに、最後の荒くれ者を片づけたスヴェンは眉間にしわを寄せて「その手を離せ」と低い声で唸るように言った。
メドレスはニヤニヤと下衆な笑みを浮かべると、胸元からペンを取り出してシェリーの首筋にあてる。
「それ以上近づけば、この女の頸動脈を突き刺すぞ。さぁどうする。今度はこの私が、お前たちと取引をしてあげようじゃないか」
ケタケタと笑って、シェリーの首筋をメドレスのザラッとした舌が這う。その瞬間、スヴェンのガーネットの瞳が怒りに燃えた。
「や、やめて……」
あまりの気持ち悪さに、シェリーの目に涙が滲む。それを見たウォンシャー公爵は、メドレスに憐みの目を向けた。
「馬鹿な男だ。アルオスフィア一の剣が、最も大事にしている乙女に手を出すなんて」
「仕方あるまい。力量も図れぬくせに無謀にも薔薇の騎士に喧嘩を売ったのだ」
床に座り込んでいたアルファスは皮肉を口にしながら立ち上がると、膝についた埃を手で叩く。
そして、執事姿のスヴェンに向かって叫んだ。
「スヴェン・セントファイフ、国王ギュンターフォード二世の名において命ずる。その男に灸を据えてやれ」
「なっ、赤薔薇の騎士に国王陛下!?」
その名を耳にした途端、メドレスは声を裏返らせてシェリーからも後ずさったが、スヴェンは構わず追い詰める。