赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
「つまり、ルゴーンと大公殿下が繋がってるってことだよね。前国王陛下の毒殺にも関わっているかもしれない。動機は王位や前王妃への執着、たくさんあることだし」
自分はアルファスに勉学や教養を教えることはできても、こういった血肉の争いから守ってあげることができない。
カヴァネスが大それたことを言っているという自覚はあるけれど、シェリーにとってアルファスは国王である以前に教え子なのだ。
だからこそ、力になれないことが歯がゆい。
「あぁ、それにルゴーンは王座に自分が座るとは言わなかった。真にふさわしい者へ〝返すべきだ〟と言ったのだ。それが大公殿下にという意味なら納得がいく」
これも広場で道化師に扮したルゴーンが言っていた言葉だ。このスヴェンの発言により、散りばめられていた不審点が繋がっていく。
見えてくる犯人像に体の芯から冷えていくようだった。
「そうだね。大公殿下は前国王と王位争いをしていたから。まったく、黒幕は大公殿下ということか……なかなか強敵で参るよ」
薔薇を布の中に戻すと、ウォンシャー公爵はソファーから立ち上がる。
「スヴェン、国王陛下を連れて逃げるんだ」
「ウォンシャー公爵……だが、逃げればアルファス様が罪を認めることになる」
「だからといって今議会に出ても、無罪にすることはできない。いいかい、最終的な議会の決定権は大公殿下にあるが、根本には四人の公爵の参加が条件になる。つまり、君が参加しないことで判決の正当性を否定できるんだ」
そうか、たとえ城から逃げている間にアルファスの罪状が決まったとしても、スヴェンの不在を理由に判決を無効にできるかもしれない。
それをウォンシャー公爵は狙っているのだ。
庶民出身でありながら、その機転の良さは勉学の賜物だと感動する。
「これは商売と一緒だ。商品を即買いするのではなく、キープするんだよ。それで時間を稼ぐ。それまでに大公殿下の悪事の証拠となりえるものを集めるんだ」
「だが、アリシア前王妃を置いてはいけない。俺は前国王からアルファス様とアリシア様のことを任されているのだ」
だから、スヴェンはアリシア前王妃と親しげだったのかとシェリーは納得する。
許されない恋をしていたのではないかと不安だったので、ホッと胸をなでおろした。