言い訳~blanc noir~
 その翌日、千尋との結婚にあたり、五十嵐から出された条件が幾つか提示された。

 女関係を結婚前に全て清算する事。

「揉めるようであれば金で解決させる。堀田絵理子以外に女はいないのか?」

「揉めるような女はいません」

 五十嵐は「そうか。わかった」と特に触れてくる事はなかった。

 もう一つの条件は、丸和銀行を退職し、五十嵐グループに入る事だった。

 他にも取るに足らないような条件が幾つかあったが和樹にとって返事に窮するものは何一つない。失うものがない和樹は身軽なものだった。

 勿論これらの話を五十嵐から切り出された際、千尋は席を外していた。


 五十嵐は言った。


「le blanc et noir フランス語だがわかるかね? ブランノワールと言ったほうがわかりやすいかな」


「色の白と黒でしょうか?」


「ああ。きみを見ていると白と黒、光と闇、生と死。どういうわけか対極ではあるが紙一重のものを感じるんだよ。毒にも薬にもなる男だと僕は感じている。千尋は意外と男を見る目があるようだ」


 シロとクロ。

 ふいにクロの姿を思い出した。


 そう言えば毛玉は元気にしているのだろうか。

 1年半ほど前だっただろうか。シロが亡くなったとブログに書かれていた。

 それきり毎日欠かす事無く更新されていた毛玉のブログがストップした。

 その後ぽつぽつと単発的にブログが更新される日もあったが、クロもシロもいなくなったせいか交わすコメントはお互いに思い出話のようなものばかりだった。
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